2011年09月29日
転職、またしたい。夫の様子で嫌でも察しがつきます
「転職したいんやけど」という夫の言葉に、私は「やっぱり」と思いました。数日前から、なんとなくそんな気がしていたのです。しかし、彼からこの言葉を聞くのはこれで何度目だったでしょうか。
転職するのは、建設関係の会社の営業職ばかり。彼なりのこだわりがあるようで、まったく別の職種に手を出すということはありませんでした。
家族や友人に話すと「また?」と呆れられます。「あんたもいつまでつきあってるの。懲りないねぇ。転職がクセになってる男となんか別れちゃいなさいよ」と助言してくれる友人もいました。
営業成績はそれほど良いわけじゃないけど、人間関係のトラブルも大きなミスもなく、きちんと真面目に仕事をこなしてきました。でも、面接した時はそんなことは言わないけれど、1年ほど勤めると、「転職したい」と言い出すのです。
夫の「転職病」が始まると、私はやりきれない気持ちで彼に当り散らします。「ええトシして転職ばっかりして何考えてんの!みんな嫌なことがあっても我慢して働いてるでしょう。仕事ってそんなもんでしょうが!」彼は言い返すこともせず、ただ黙ってうなだれているだけ。
でもきっと、彼は必死であがいていたのでしょう。自分の人生を前向きにみつめ、本当にやりたいことを模索し続けていたのに違いありません。転職に逃げているとは思えなかった。だから私は結局許してきたのです。
そして、彼から「職人になりたいんや」という言葉を聞いたとき、私は、なぜか安堵しました。彼はとうとう、自分が進むべき道を見出したのです。
大きな手で器用に何でもこなすところ、力仕事をいとわないところ、無口だけど嘘はつかないところ。考えてみれば、彼は職人に向いているのかもしれません。その気質は、長年大工を立派として働いている彼の父親にもよく似ているのです。
私は答えました。「わかった。好きなようにしてみて。私、今回の転職には賛成」彼は驚いたように顔を上げ、嬉しそうにうなずきました。
1ヶ月に渡る転職活動の末、彼は隣市の小さな建設会社に、施工管理担当者として採用されました。彼の希望通り、職人としての再スタートが決まったのです。
面接して、いくつもの現場を見て勉強してきたこと、簡単な施工ならすぐできるくらいの技術をすでに身につけていたこと、そして彼の真面目な仕事ぶりは、上司に高く評価されました。転職してすぐに基本給がアップし、まもなく主任にも昇格しました。役職手当もつくようになったのです。
この転職は正解だったと思っています。なにしろ、彼の表情が今までと違い、イキイキしています。きっと遣り甲斐を感じられているのでしょう。帰宅が早くなり、休みの日も増えたので、家族で過ごす時間が増えました。もう彼が転職することはないでしょう。